【2025年10月27日】 地下鉄東豊線建設促進期成会連合会と秋元札幌市長とのやり取り(詳報)

地下鉄延伸を秋元市長に重ねて要望しました

 地下鉄東豊線建設促進期成会連合会(会長:牧野晃清田地区町内会連合会相談役、豊平区・清田区の全町連、商工団体、企業など20団体で構成)は10月27日(月)、地下鉄東豊線を福住から清田まで延伸するよう秋元克広札幌市長に重ねて強く要望しました。

 この要望活動には、期成会から役員の町連会長や、顧問の豊平区・清田区選出の市議、道議、国会議員ら総勢21名が参加しました。

岡本会長代行が秋元市長に要望書を手交

 まず、岡本諒会長代行(北野地区町内会連合会会長)が秋元市長にA4版10ページに及ぶ「要望書」を手交しました。そして岡本会長代行は

1 地下鉄東豊線を清田地区まで延伸すること

2 清田地区にまちづくりの核となる「地下鉄駅とバスターミナル」からなる交通結節点を造ること

3 北海道農業研究センターの土地(国道36号線と羊ケ丘通の間のエリア)を取得し、札幌のまちづくりに活かす施策を進め、国道36号線沿いに清田まで地下鉄を延伸すること

4 市は昭和59年(1884年)、今の里塚斎場(火葬場)を里塚霊園内に造った際、清田方面への地下鉄建設を地域に約束した。それを反故にしたまま、新たな斎場を再び里塚霊園内の別の場所に建設しようとしているが、到底認められない。約束通り地下鉄を建設すること

5 秋元市長は3期目の任期中に地下鉄清田延伸の方向性を出すこと

の以上5点を要望しました。

 これらの要望について岡本会長代行は次の3点を強調して延伸を迫りました。(要望書の全文はこちらからご覧ください)。

■岡本諒期成会会長代行

(1)公営交通は、様々な観点から総合的に検討すべき交通インフラです。札幌市は、板垣市長、桂市長の時代は清田方面への地下鉄建設方針を打ち出していました。

 それが上田市長になって「採算性」を唯一の判断基準にして「地下鉄延伸は困難」というようになりました。

 私たちも「採算性」が重要なのは認識しておりますが、「公営交通は、採算性だけで判断するのはおかしい」と申し上げてきました。

 地下鉄清田延伸については、採算性だけでなく様々な要素を加味して総合的な判断をしてくださることを要望いたします。

(2)農業研究センターの土地活用と地下鉄延伸

 私たちは、北海道農業研究センター(国道36号と羊ケ丘通の間のエリア)の土地活用が、札幌市全体の都市づくりと未来像にとって大きな意味を持つと確信します。

 北海道農業研究センターは、北海道の稲作など農業の発展に大きく貢献してきました。しかし、ここは何とか札幌のまちづくり、都市政策のために札幌市に譲渡頂けないものでしょうか。

 札幌市が取得できるように、市にも特段の努力をお願いいたします。農業研究センターの土地は、札幌市が南東部に新たな都市機能を集積させる戦略的資源になり得ると思われます。

(3)3期目の任期中に地下鉄清田延伸の方向性を

 秋元市長の3期目任期は、残すところ1年半になりました。ぜひ、この任期中に地下鉄延伸の方向性、道筋だけでも打ち出していただけないでしょうか。

 市長は、延伸を望む私たちに「私も同じ思い」と近年、再三おっしゃってくれます。この「同じ思い」の秋元市長に、ぜひ清田延伸の方向性を3期目の任期中に示していただきたいのです。

 札幌のまちの骨格を完成させてください。その政治判断をぜひ「同じ思い」の秋元市長に私たちは期待します。

以下、秋元市長の回答および期成会とのやり取りです。

■秋元克広市長

秋元市長

 改めて地下鉄清田延伸への皆さんの熱い思いを聞き、これを重く受け止めています。

 清田方面に軌道系交通機関がなくバス交通に頼らざるを得ない中、昨今のバス運転手不足によるバス減便があり、地域の皆さんが不便・不安な状況であることを私たちは重く受け止めていかなければと思っています。

 そうした中、なかなか最終的な方向性が出せないでいます。これは将来にわたっての地下鉄事業の事業採算性が重要だからです。特に国に許可をいただく際に重要です。

 建設事業費を長年に渡って収益で賄い、採算性を取っていくとうことです。当然のことながら開業当初は赤字になりますけども、何年か後には単年度黒字になって、その分で長年にわたって建設費を賄っていくということです。

 お陰様で今は札幌の南北線、東西線、東豊線すべての路線で単年度の収支は黒字になっています。南北線を除き東西線と東豊線は累積赤字(累積欠損)がありますが、これは長年にわたって返していくという状況になっています。このような状況でなければ、つまり単年度の黒字が見込めないというということであれば、これは計画として成り立っていかないということになります。

 平成23年(2011年)に清田方面の延伸について採算性を検証しました。その時、単年度の黒字がなかなか難しいということで、それが今に至っているところです。

 しかし、その後、現在の土地利用の状況や千歳方面に半導体の新たな製造拠点が立地し、企業集積が見込まれていく形の中、清田区など札幌東南部の人の動きが変わってきている、あるいは変わっていく可能性があるという状況があります。

 こうした中で、ドーム周辺の土地利用、あるいは北海道農業研究センター(国有地)の土地活用などを踏まえて、地下鉄の需要を高めていく計画をしっかり持っていかなければと考えています。

 今、国勢調査が行われています。それから平成18年(2006年)以来19年ぶりに札幌圏のパーソントリップ調査が行われており、人の動き、移動の調査を行っています。こうした人の流れに加えて、東豊線の沿線(月寒グリーンドーム跡地)では今、新しい展示場(アクセスサッポロの後継施設)が建設中です。こうした所の需要の見込みとかも加味した形で検討します。

 また、将来にわたって国とも鋭意、協議をさせていただいておりますが、北海道農業研究センターの土地については、現時点で方向性を見出せている状況ではありません。が、引き続き、こうした土地活用と交通(地下鉄)のことをセットで考えていかなければと思っています。

 今年の国勢調査やパーソントリップ調査、近年の札幌近郊における企業集積の状況、こうしたことを含めて、バスの減便など公共交通の全体の影響を加味しながら、(地下鉄清田延伸について)総合的に判断していきたいと思っています。

 3期目の任期中に地下鉄延伸の方向性を出せということですが、今行っている調査等を含めて考えていくということで、今はちょっと出せない状況です。

 ただ、私の思いは皆さんと同じです。雪の多い札幌で、地下鉄は非常に大きな交通手段です。住民の足という意味では非常に重要な要素であり、採算性だけでは語れるものではないと認識しております。

 が、一方で、将来にわたって赤字がずっと膨らんでいくという計画は作れませんので、そこは責任を持った形の中で、方向性を出していかざるを得ないということをご理解いただきたいと思います。

 皆さん方の熱い思いを改めて重く受け止めさせていただきました。(地下鉄延伸に関して)今、市もいろいろと調査を含めて動いておりますので、ご理解いただきたいと思います。

■鈴木亨清田中央町内会連合会会長

 清田区には人が集まる施設が足りない。だから地下鉄を清田まで引っ張ってこられないのではないでしょうか。清田方面のまちづくりの青写真がないために、民間投資も進まず、地下鉄も呼び込めないのでは。

■秋元市長

 まちづくりは、計画そのものは行政を中心にやって行くけども、行政だけですべて完結するわけではありません。民間が投資意欲を持つことも重要です。行政の施設だけできても、その周辺にまちが広がって行かないということもあるので、民間の投資も踏まえて計画全体を作り上げていかなければなりません。

 そして、どのような土地利用をしていくのか、そこに対してどういう交通手段をもって来るのか、これをセットで考えていかねばなりません。

 清田区役所周辺で公共としてできることについては、今、清田区民センターの移転新築ということを取り組んでいます。しかし、民間の投資が得られる方向性を作っていかなければ、交通需要も増えていかないので、引き続き民間投資を含めてどういう形で出来るのか、引き続き進めて参りたいと考えています。

■岡本会長代行(北野地区町内会連合会会長)

 清田区には市の施設として区役所、区民センター、体育館はあるけども、これはども区にもあります。そのほか市の施設として人を呼び込めるような施設が清田区にはありません。せいぜい里塚斎場くらいです。地下鉄もありません。こうしたことに我々住民は不満を持っているのです。

■中川昇平岡地区町内会連合会会長

 今日は前向きな言葉を期待してきましたが、国勢調査やパーソントリップ調査等々の分析をしてから結論を出すということでした。一体、その分析から結論に至るにはどの程度の時間が想定されているのでしょうか。早めに新たなことを示してほしい。

■秋元市長

 先ほども申し上げましたように、「思い」はあっても「思い」だけで実現できるわけではありません。「こうやっていく」という裏付けを、責任を持った形で区民や市民全体、国に対して説明していかなければなりません。

 そういうことで、今現在あるデータは古いので、今、19年ぶりに札幌圏でのパーソントリップ調査を行い、新たなデータが出てくるので、そういったものも加味していかねばなりません。

■有田京史東月寒地区町内会連合会会長

 地下鉄を清田方面まで建設するという札幌市の公式の計画があったにもかかわらず、上田市長が止めてしまった。採算性を唯一の判断基準に持ち出してです。以来、市からは採算性だけが語られてきたように感じています。

 札幌市は、地下鉄を主体とした大きな都市計画作りを進めてきて、最後の清田区の地下鉄建設という仕上げの段階の前になって上田市長が建設を止めてしまった。

 ここは本来の形に立ち戻って、地下鉄清田延伸を含めた大きな札幌市の都市計画づくりを札幌市は考えてほしい。地下鉄を清田まで通せば人も集まり需要も高まります。

 次世代のための投資でもあると位置付けて、採算性もあるでしょうが、札幌の将来のために、次世代のために、札幌を完成した形で渡すんだと。そういった気概をアピールしていただければ、若い世代の市民も共感すると思います。

 今、国策として千歳にラピダスがあるわけです。それにつながる札幌市の都市づくりが求められています。千歳と札幌の間に清田区がある。その重要な大動脈として地下鉄清田延伸の位置づけがあると感じています。

 上田前市長は「開業後30年間で累積黒字化が出来なければ国は鉄道認可をしてくれない」と言って「清田延伸は難しい」と言っていましたが、2022年2月の衆院予算委員会で荒井優議員がこれについて質問。国土交通省鉄道局長から「公営交通は事業主体がしっかりしているので、その限りではない」との答弁を引き出してくれました。

 それを聞いて上田前市長は「ああ、それなら地下鉄清田延伸は進めるべきだ」と、期成会に語りました。「私は政策を間違った」と言ってくれたも同然です。上田さん、そこはすごい所だと思います。その上田前市長の思いを含めて、次の世代に向けてのアピールとともに今の任期中に方向性を出していただきたいと思います。

■秋元市長

 ありがとうございます。有田会長が今おっしゃったことと私は同じ考えです。

 ただ、誤解してほしくないのは、地下鉄清田延伸の構想がなくなったわけではないということです。

 札幌市の計画の中で、上田市長時代には地下鉄清田延伸は進まなかったということはあっても、その計画を市が消したという事実はありません。

 札幌のまちづくり全体の中で清田方面への地下鉄延伸は、札幌市として必要な計画・構想として今も持っているということです。

 一方で、具体的事業として国に対して認可を申請し進めていくためには、どうしても採算性というもの、つまり数字を出していかなければなりません。

 で、構想した当時は、そんな具体的な計算をしているわけではありません。そして具体的な作業に入って行こうとすると、何年で回収するかという計画を作って行かなきゃいけません。

 国の「30年で黒字化しなければいけない」ということについて、そこは「30年にこだわりませんよ」という国のお答えをいただいたのも事実です。だけど、ずっと赤字でいいとも言っていません。

 先ほども言いましたが、少なくとも単年度の黒字が出て、30年でなくても50年で回収していくという計画が作れなければ、これを事業計画として具体化していくことができません。

 それは上田市長の時代も今も、その計画を出せる状況にはまだ至っていないということなんです。

 人口の減少期に入っているけど、一方で、今、様子が少し変わりつつあるのは、北海道が新しい産業の定着があり、さらに札幌市は、そうした新しい産業の定着に向けて取り組み始めたわけです。黙っていたら人口減少になっていくところを、何とか歯止めをかけていく、そういう取り組みを始めたわけです。

 そういった新たな土地利用を考えたときに、清田区、厚別区などの札幌の東部地区をどう考えていくのか、考えていかなきゃならない時期に来ていると思います。

 そういった方向性、新たな要素、それから最近のデータを使って、少し大きな考え方を作っていきたいという思いを私は申し上げております。

 ただし、今の時点でそれを、方向性を言えと言いますが、その段階には至っていません。私としては、データを含めてまだ持ち合わせていないからです。これから作って行かざるを得ないことをご理解いただきたいということを申し上げています。

■山田洋聡市議(清田区)

 人口減少の中、パーソントリップ調査だけを元にしていくと、地下鉄延伸には厳しいことになるのではないかと懸念しています。ここはしっかりとまちづくりとともに地下鉄をしっかりと整えていかなければ、市長もおっしゃっている千歳方面からの企業誘致とかもしづらくなるだろうと思います。清田区は千歳方面への玄関口といったところで、企業は不便な場所に会社を構えようとしないことは明確であるからです。

 パーソントリップ調査だけでなく、十分ご配慮いただいたような今後の計画にしていただきたいと思います。

■秋元市長

 まさに、今おっしゃていただいたことだと思うんですよね。現状のデータの分析だけで将来推計するのではなく、今、新たな要素を入れたときに、道央圏の中で札幌の位置づけをどう考えていくのかということです。

 そういう意味では、ある程度、民間が投資できるような土地の開発みたいなことをセットで考えていかなければならないので、簡単なことでありませんが、国の持っている土地(北海道農業研究センターの一部土地)の活用なども進めていかなければならないだろうと思っております。

そういうものと合わせて、土地利用と交通(地下鉄延伸)の施策というのを一体的にどう考えていくのか、という検討をしていく必要があると考えています。

■荒井優衆院議員(北海道3区)

荒井優衆議院議員

 この問題(地下鉄清田延伸)は超党派で向き合っています。もちろん課題も、採算性の問題等たくさんあると思います。農研機構(北海道農業研究センター)を含め、国、国交省など様々なお力を借りる必要があると思います。

 そこは挙げてみんなで一生懸命やっていきたいと思いますので、市長含め札幌市も前向きに考えていただきたい。よろしくお願いします。

■秋元市長

 ありがとうございます。いろんな形でお手伝いもいただきたいと思います。

■川島亨期成会事務局長

2024年7月、清田ふれあい区民まつり会場で

 昨年と今年、2年連続で清田区民まつりの会場で、秋元市長は「清田区へ地下鉄を」と書かれた期成会ののぼり旗の所で記念写真に収まってくれました。ありがとうございます。

2025年6月、清田ふれあい区民まつり会場で

 きょうの市長の話で印象的だったのは、「上田前市長が地下鉄清田延伸の話を止めたわけではない。今も市は延伸の構想・計画を持っている」ということです。

 さらに、2020年に改訂した札幌市総合交通計画では「清田区は人口が減少しており、事業採算性を勘案した慎重な検討が必要」とされましたが、きょう市長は清田区など札幌市の東南部の土地利用をどうするのかという話を積極的にされました。私は大変重要な視点だと思いました。

 地下鉄建設に関する将来推計については、現状だけで推計する「静的モデル」ではなく、千歳方面の企業立地の動きや、地下鉄が清田へ延伸した場合、様々な民間投資を呼び込み、どのようなまちの変化、人の動きの変化があるのかといったことを含んだ「動的モデル」で行っていただきたい。

 実際、かつて東西線を宮の沢まで延伸した際、宮の沢地区では民間投資が増え、人口が増え、税収も増えました。

■秋元市長

 今、札幌市内の事業所や工場が市内に建て替えを行おうとしても、なかなか市内に用地がない。あっても、土地代が合わなくて市外に出て行ってしまうという動きがあります。このため、従前だと郊外から札幌中心部に人が働きに来て、郊外に帰るという流れが主流でしたが、今行っているパーソントリップ調査では、この流れが逆転する可能性が非常に高いと思っています。

 札幌市内に居住して、郊外・市外に働きに行っている人の流れが生じているので、そういった人の流れの変化が今後、まちづくりや交通政策、土地利用を考えていく上で参考になるのだろうと思っています。

 人の流れの変化が将来的にどうなって行くのかということを見ていく。今、そのきっかけになっているのではと申し上げておきたいと思います。

■三上洋右市議(豊平区)

三上洋右市議

 市長、きょうはどうもありがとうございます。市長は「同じ思い」なんだと、「清田まで延伸させたい」んだと。その言葉には嘘、偽りはないと思います。

 でも国に対してきちんとしたプランを示さないと、認められないだろうということも、市長は長い行政経験の中で熟知しているわけです。ですから、きょうここで「思い」だけで「分かったよ」とは言えないし、また、そんなことを言ったら議会軽視だと言われてしまいます。議会で何も言っていないわけですから。

 今、市長は担当部局に命じてですね、ドーム横などをどのように有効活用できるのかとか、びっしりと検討をやっているわけです。そのアイデアがまとまってポーンと発表するまでには至っていませんが、もう毎日のように検討しています。これ、私はそばにいて、よく分かっています。

議会に言っていないことを、ここで言ってしまったら、これは大変なことになるわけです。

 でも、きょうは市長、だいぶ踏み込んんでお話されたなと内心、そう思っております。おそらく来年のこの場では、きちんと表明できるのではないかなと思いますので、皆さん、諦めないで続けていきましょう。

 市長、よろしくお願いします。

■中川平岡地区町内会連合会会長

 来年、期待しております。

■岡本会長代行(北野地区町内会連合会会長)

 本日はどうもありがとうございました。

■秋元市長

 どうもありがとうございます。