12月4日(水)開かれた定例札幌市議会本会議で、清田区選出の山田洋聡市議(自民党)が自民党の代表質問に立ち、地下鉄東豊線の清田までの延伸を重ねて強く求め、市側に見解をただしました。

 答弁に立った天野周治副市長は「延伸には事業採算性が必要であり、ドーム周辺や地域交流拠点清田のまちづくりなどを進め、土地利用の動向や人の動きによる需要の変化を見定めていく」と述べました。

 山田市議は様々な市政課題全般を取り上げましたが、ここでは地下鉄清田延伸に関する部分にしぼり、そのやり取りをノーカットで紹介します。

■山田洋聡市議

意見を述べ、質問する山田洋聡市議(札幌市議会インターネット中継より)

 札幌市が全国的にも人口の多い大都市であることは既に誰もが承知しているところであります。そして、全国の大都市を見てみますと、公共交通が整備されていることは共通認識ではないでしょうか。

 例えば、大都市の多くは電車や鉄道など乗り換えの利便性が高く、高速道路は環状化も進んでおり、新幹線など高速移動が可能な交通が整備されております。

 札幌市においては災害の観点からも放射状のまちづくりをしてきた背景があり、これも機能的な構造ではあると思いますが、中心部まで移動しての乗り換え、鉄道結節は数えるほど、そして路線バスの減少。便利とは言い難い状況が続いていると感じます。

 その上で、他の大都市と札幌市では誰もが知る「雪」の差があります。毎年毎年、年に数回発生する大雪から数日間、私たち札幌市民、特に清田区民は何度も何度も交通麻痺を強いられています。

 この現状の中で地域交流拠点の整備とは一体何を指すのか。清田区だけが地域交流拠点の整備から取り残され、中心核の整備が進まないのは、もはや地下鉄がない以外考えられません。

 第2次札幌市都市計画マスタープランにおいて、清田は「先行的に取り組む地域交流拠点」とされる一方、「清田区には軌道系公共交通機関がなく、最寄り地下鉄駅までのルートを中心にバスネットワークが形成されています」と明記されております。

 この文脈からは①札幌市は地下鉄が公共交通の根幹を担っていること②しかし、清田区はバスが公共交通の根幹である―と読み取れます。

 バスの減便が続く中で自家用車が移動手段の多くを占めるようになり、これは更なる交通渋滞を招き、脱炭素社会の実現とも逆方向に進むことになります。

 私たち清田区民は平成9年11月4日に分区されて以来、満27年もの間、地下鉄も警察署も無い状態であり、こうした状態が解消されないことに一部から「どうせ無理なんでしょ」という諦めすら漏れ聞こえてきます。

 地下鉄延伸に限らず、市民に諦めや絶望を強いる状態がこのまま続いて本当に良いのでしょうか。

 1988年、第3次札幌市長期総合計画において地下鉄延伸が明記され、どれ程多くの市民が「それならば清田で事業を始めよう、清田に暮らそう」と決心したことか。市民一人一人の生活を本当に考えてもらっているのか、疑問の声が無くなることはありません。

 中には、札幌市から立ち退きを要求されたときに長期総合計画を信じて清田に会社も自宅も移転された方がいます。あまりに酷い仕打ちではないでしょうか。「清田区は札幌市ではないのか! あまりにも不公平過ぎる!」との声もあります。

 現実的な話として、国の認可のために採算性を無視できないことも承知しているところではあります。先月の11月11日、地下鉄東豊線建設促進期成会連合会からの延伸要望に対し、市長から「採算性の観点から需要増を見込む必要がある」と答弁がありました。

山田市議

  清田区に地下鉄を延ばすために札幌市のまちづくりをする訳ではないのは当然理解するところではありますが、札幌市が人口減少対策を明確に打ち出しているとも思えず、事業の見直し・再構築に重点を置くというよりは、これまで進めてきた札幌市の事業をそのまま継続してきているようにも思います。

 これまでやってきた政策では人口増が見込めないことを認め、新たな少子化対策を打ち出し、札幌市の活性化について抜本的に取り組んでいただきたいと思います。

 また、「需要増を見込む」ためには、公共交通の整備とセットで人が集まる施設の整備なども重要になります。まちづくりにおいて重要視される「交流人口」です。

 現在、地下鉄東豊線延伸に関連した施設といえば、大和ハウスプレミストドームとその周辺開発が一番に上げられるところであり、こちらもしっかりと進めていただきたいのは当然のこと、ラピダスやGX推進を国家プロジェクトとしての働きかけを強め、地下鉄東豊線建設促進期成会連合会の要望にもありました国道36号線沿線の土地活用(「ひろまある清田」注:北海道農業研究センターの土地活用のことと思われます)と発展・開発を強く求めます。

 地下鉄の需要増要素を積み上げ、それが人口増やまちづくりにおける賑わいや活性化に繋がり、未来の子供たちに札幌市を繋げていく。私たち大人の行うことの全ては次世代のために繋げていくことではないのでしょうか。札幌市から発展し、北海道、日本とその波を札幌から起こしましょう。

 地下鉄延伸への思いは同じであると度々、秋元市長より言及があります。共にアイデアを持ち寄り地下鉄延伸実現に向けて具体的な議論を進めていくことを切に願います。

 そこで質問ですが、地下鉄東豊線清田区延伸の検討状況、また、延伸に必要な具体的な条件について伺います。

■天野周治副市長

答弁する天野周治副市長

 地下鉄東豊線の清田方面への延伸につきまして、平成23年度に事業採算性の検証を行っており、利用者数予測に基づく収支見込みを算出しましたが、地下鉄を延伸するために必要な需要は見込めませんでした。

 一方、まちづくりに関しましては、大和ハウスプレミストドーム周辺におけるスポーツ交流拠点の形成に向けた取り組みや、地域交流拠点清田における清田区民センターの移転・整備、市民交流広場の機能拡充の取り組みなどを進めてきております。

 地下鉄延伸にあたりましては、事業採算性の確保が必要であり、そのためには需要の増加が欠かせないことから、こうしたまちづくりを進めつつ、土地利用の動向や人の動き等による需要の変化を見定めていく必要があると考えております。

【論評】

 天野副市長の答弁は、そっけない、いかにも官僚的な答弁ではありましたが、注目すべき点もありました。「ドーム周辺や地域交流拠点清田のまちづくりを進めつつ、土地利用の動向や人の動きによる需要動向の変化を見定めてゆく」と、はじめて今後のまちづくりと地下鉄延伸の可能性を絡めた答弁を行った点です。

 従来は「事業採算性が見込めないが、今後の土地利用の状況を見て検討する」という表現だったのが、今回初めて「今後のまちづくりを進めつつ」という表現を加えました。

 確かに事業採算性は相当厳しいけども、なんとか許認可権のある国を説得させる大義名分や理由付けを書けないかという札幌市(秋元市長)の姿勢を少し感じさせてくれる答弁だったように思えました。

 また、山田市議が、このままの政策では、札幌市は少子化が進み人口減少が進むとの危機感を表明し、その上で「これまで進めてきた札幌市の事業をそのまま継続」するのではなく、「札幌市の活性化について抜本的に取り組んでいただきたい」と指摘している点も大事な点だと感じました。

 そして山田市議は、ラピダスやGXなどの国家プロジェクトの絡みで、北海道農業研究センターの土地活用と国道36号線沿いの福住―清田間の開発を提言もしました。

 これは清田区や豊平区の地域課題ではなく札幌市全体にとっての喫緊の課題です。その延長線上に地下鉄延伸もあるのだと思います。

 札幌市はもっと「稼げるまち」にならなければならないという意見を最近よく耳にします。経済力がなければ、市民の暮らしも福祉もままならないからです。

 そういう意味で、札幌市には、北海道農業研究センターの土地活用など札幌の活性化を目指してダイナミックなまちづくりを検討していただきたいと思います。

 その中で札幌市の地下鉄建設計画で唯一、実現していない福住―清田間の延伸を実現してもらいたいものです。