地下鉄東豊線建設促進期成会連合会は9月21日(水)、札幌市役所を訪れ、秋元克広札幌市長に「地下鉄を清田区まで延伸を」と重ねて要望しました。

秋元市長に地下鉄延伸を要望する期成会代表(右側)

 秋元市長は、札幌ドーム隣接地でアリーナ建設などのスポーツ交流拠点づくりを進めていることや、白石区にあるアクセスサッポロの後継施設を豊平区の月寒グリーンドーム跡地に建てる計画があることなどから、「従来の需要推計とは変わってくると思う。改めて東豊線清田延伸の需要推計をしたい」と述べました。

秋元克広札幌市長

 また、需要推計には、近年、清田区に子育て世代の転入が多く、人口動態に変化がみられることなども需要推計に反映させる意向を示しました。

 これまでは、地下鉄期成会の要望に対して「事業採算性から難しい」との回答でした。今回の秋元市長の回答は、需要推計を改めて行うという点で今までよりは具体的な内容だったと言えます。

 秋元市長への要望には、期成会の牧野会長と鈴木亨副会長(清田中央地区町内会連合会会長)、有田京史副会長(東月寒町内会連合会会長)、川島亨事務局長(清田地区町内会連合会広報部長)が参加しました。市側からは秋元市長のほか村瀬都市計画担当局長、宮崎総合交通計画部長、小林交通計画課長が出席しました。

 牧野会長から秋元市長に要望内容をまとめた要望書が手交されました。

 地下鉄延伸の要望は同日、細川正人市議会議長にも行いました。また、要望書は市議全員にも配布しました。

 牧野会長が、要望書に沿って秋元市長に説明した内容と、秋元市長の回答、さらには期成会側とのやり取りのすべては以下の通りです。

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■牧野晃会長(清田地区町内会連合会顧問)

 私から、説明させていただきます。

(1)地下鉄東豊線を清田区まで延伸し、清田区民の交通利便性を他区並みの水準にしてください。

(2)地域交流拠点清田(清田区役所、西友清田店、道銀清田支店、北洋銀行清田区役所前支店などがある地区)に地下鉄駅を設置してください。そうすれば、そこにバスセンターも設置され、交通結節点(地域中心核)ができます。これは清田区民の切実な願いであり、清田のまちづくりに絶対不可欠です。

(3)来春の市長選に出馬される暁には、選挙公約に「清田までの地下鉄延伸」を前向きの表現で入れてください。

 以上3つの要望について、具体的に説明いたします。

●交通アクセス向上は清田区民の切実な願いであるという視点

 この冬の大雪で清田区は始発からほぼすべてのバスが運休となり、地下鉄がない清田区は、生活に大きな支障が生じました。運休が数日続いた地区もありました。

 問題は冬だけではありません。清田は中心部への移動時間が突出して長くかかります。市はかつて清田まで地下鉄を建設する計画を立て、市議会でも「清田まで建設」と公言していました。区民への約束は守っていただきたい。

●清田における交通結節点(地下鉄駅+バスセンター)の設置という視点

 札幌市は地域のまちづくりを市内17か所の「地域交流拠点」を核に進めています。しかし、清田だけはその形成が進んでいません。地下鉄がないからです。地下鉄がないのでバスセンターもできません。交通結節点ができないので、地域交流拠点も形成されません。

 札幌市は、地域交流拠点清田について、イオン平岡店を増床・拡張させて、その賑わいを清田地区に及ぼそうという構想を発表していますが、清田地区とイオン平岡店は1.7㎞も離れていて、どうしてその増床が地域交流拠点清田の形成につながるのか、地域住民は全く理解できません。

 交通結節点を造るという本来の姿で真正面から地域と議論してほしいと思います。

●スポーツ交流拠点整備に合わせた地下鉄延伸という視点

 札幌市は「札幌ドーム周辺地域におけるスポーツ交流拠点構想」を発表しています。これは、アリーナ、ラグビー場、多機能スポーツ施設等を整備しようというものです。

 こうした大型集客施設には、大量高速輸送機関の地下鉄が不可欠です。ぜひスポーツ交流拠点の整備やドーム周辺の土地利用に合わせて地下鉄を清田まで延伸してください。

●子育て世代の転入が多いという清田区の特性という視点

 国が今年3月に発表した公示地価で、清田区は札幌10区の中で住宅地も商業地も上昇率は1位でした。これは清田区の土地需要の高さを物語るものであります。

 また、清田区の転入転出の状況を見ると、大学生や社会人になって清田区を離れる若者世代が多い一方、住宅を求めて子育て世代が転入してくる傾向が顕著です。

 市は、「清田区において人口が減少している」ことを総合交通計画に記載していますが、それは地下鉄が延伸されない現状のままでの分析です。

 清田地区に交通結節点を造った場合を想定して改めて分析し、私たち市民の声に耳を傾け、一緒に希望あるまちづくりを進めていただきたいと思います。

●公営交通の役割という視点

 札幌市はここ数年、「採算性がないので清田延伸は難しい」と言ってきました。もちろん採算性は大事です。しかし、公営交通は採算性だけで判断するものでしょうか。

 市は前市長の時から「30年間で累積黒字化」が地下鉄認可の国の基準だと私たちに説明してきました。

 しかし、今年2月、衆議院予算委員会において、国土交通省鉄道局長は「30年という一応の目安はあるが、公営交通は事業主体がしっかりしていることから、より柔軟に対応している」と答弁しています。

 私たちは「公営交通を採算性だけで判断するのはおかしい」と申し上げてきました。住民の足を確保するのは行政の責任だからです。

 札幌市も、「市民の暮らしを支える」など採算性以外にも様々な観点から総合的な判断で地下鉄清田延伸をお考え下さい。

●北広島方面、新千歳空港を見据えた広い視野で延伸を判断する視点

 時間の関係で説明は省略します。要望書をお読みいただきたいと思います。

 終わりになりますが、市長は今年7月に開催された清田ふれあい区民まつりにおいて、「地下鉄延伸を含めた交通機関について、住民の皆さんと一緒に考えていきたい」と発言されました。

 久しぶりに市長から前向きととれる発言を聞きました。選挙公約には、ぜひ一歩踏み込んだ内容を盛り込んでほしいと願うものです。

 今年、札幌市は市制100周年の節目を迎えました。秋元市長には、苦しい財政事情ながら、50年、100年先に残る札幌市の交通インフラの骨格構造をぜひ完成させてほしいと願っております。

■秋元克広札幌市長

 ありがとうございます。東豊線の清田方面の地下鉄延伸と清田のまちづくりに関してご要望をいただきました。改めまして皆様方のこれまでの活動と、地域を持って活動いただいていることに感謝申し上げます。

 地下鉄の清田までの延伸については、これまでも札幌市としても計画を持ち、そして地域の皆様方も長年、期待をされているところであります。

 鉄道、鉄路がない清田区においては、公共交通はバス事業者を中心とするバス交通が主という状況にあり、今年の冬の大雪の対応もそうでありました。

 清田区の課題として、やはり交通環境の改善、整備ということが重要な地域課題であると認識しているところであります。これはまったく変わりないところでありますし、皆様方と同じ思いです。

 地下鉄の延伸について、これまでも実現に向けた検討を進めてきたわけでありますが、平成24年(2012年)に将来需要を推計し、「現状では地下鉄が延伸されて需要が増えたとしても、事業を維持できる採算性の確保が難しい」ということで今日に至っているわけであります。

 前回、私の二期目の選挙の時に、「札幌ドーム周辺の土地利用の状況を踏まえて将来推計を改めて行い、地下鉄延伸を検討していく」ということをお話させていただきました。

 今、2030年オリンピック・パラリンピック招致に向けた活動をしており、今まさに最終決定に至るか至らないかという状況に来ている状況であります。

 仮に、この2030年冬季オリンピック・パラリンピックが実現していくということになれば、そして国のプロジェクトとして位置付けていただければ、札幌ドーム周辺の土地(注:北海道農業研究センターの土地)の取得などについて国の機関とも協議させていただくことになります。

 国の土地の譲渡は簡単には行かないようでありますが、国家プロジェクトが動くということであれば、土地の譲渡という可能性も高いという話をいただいております。そういう意味でも2030年冬季オリンピックの招致をぜひ実現したいと進めているところであります。

 その上で、今、例えば(札幌ドーム隣接地に)体育館やアリーナの新設計画を具体的に進めることにしており、そういった施設が(福住からの延伸ルート上に)新たにできます。

 さらに、アクセスサッポロ(白石区流通センターにある大展示場・多目的コンベンション施設)の後継施設を月寒グリーンドーム跡地に建設する検討を進めています。

 こうしたことにより、地下鉄東豊線の利用状況、将来推計ということも今とは変わってくると思っています。改めて、今、計画されている土地利用なども含めた需要推計を行っていきたい、そう思っています。

 期成会の今回の要望書の中にも「(延伸は)採算性だけでなく、総合的に判断を」という話がありました。

 国の「30年で累積黒字化」ということ、これは「概ねの基準」ということでありますが、現在の需要推計では、単年度で黒字化にならないという状況です。黒字化のめどが立たないことが一番悩んでいるところです。

 当然、まちづくりだとか地域の発展という(採算性だけではない)要素を入れて、緩和していくわけですが、「単年度で費用を賄えない」ということは、将来、赤字を膨らませていくことだけになってしまうので、そこは何とかクリアした状態の計画をつくり進めていかなければならないと思います。

 さきほど牧野会長からも「清田区では子育て世代の転入が増えていますよ」といった清田区の人口動態の状況の話がありました。こういったことを含めて、新たに(地下鉄延伸の)需要推計に取りかかりたいと思っています。その上で、最終的に計画を進めていくかどうかという判断をさせていただきたいと思います。

 それから、外国からのミサイル攻撃に備えた一時避難施設の件で誤解のないようにお伝えしたいと思います。(注:8月24日、札幌市は地下鉄駅全駅を一時避難施設に指定。地下鉄がない清田区は置き去りか、と不安・不満の声が区民から出ている)

 これは地下鉄施設だけを緊急避難施設に指定したということではなくて、学校など堅牢な建物は既に指定しています。それに加えて今回、地下鉄の施設を付け加えたということであります。清田区には、こういった避難施設がないということではありません。ご理解いただきたい。

 いずれにしましても、皆様方のご要望は何度もうかがっており、その思いは私も同じであります。何とか実現してまいりたいと思っております。

 一方で、都市の経営者という立場では、きちんとした経営計画を持っていかなければいけないと思っています。それも責務だと思っていますので、経営計画、将来計画が見通せる状態でなければゴーサインという決定はできないのが現状です。この点についてもご理解をいただきたいと思います。

 また、当然、地下鉄の延伸が実現するまで何もしないということにはなりません。バスの利用環境や、地域交流拠点清田を進める話もあります。清田区民センターを区役所周辺へ移転する話を含めて区役所周辺の賑わいづくりを進めて参ります。

■鈴木亨副会長(清田中央地区町内会連合会会長)

 清田区民の気持ちを市長にはご理解いただきたい。ご存じの通り今年の冬の大雪で、他区と比べて交通をはじめとした生活基盤の脆弱性が表面化し、区民全体が長期にわたり生活困窮状態に陥りました。

 この大きな要因は、交通アクセスの選択ができないことにあります。民間事業者が運営するバスの運行に、清田区民の生活を預けざるを得ない生活は、選択肢がなく、不便が解消される見込みがありません。

 清田区は、JRも地下鉄もなく、バスターミナルもありません。これが要因となり、清田区は中心核も形成されず、立地のめどが立たない施設も多々ある状況のまま、分区から25年もの長き時が過ぎてしまいました。

 その間の清田区民の苦労と困難を、ぜひ市長にはご理解いただくことが必要であると思っています。

 清田区民は札幌市民として、他区と同様な生活上の選択が可能な環境が整備されることを切に望んでいることをご理解いただきたい。市長のお気持ちをお聞かせください。

 また、市は8月24日、外国からのミサイル攻撃に対して、緊急避難施設として市営地下鉄の全駅を指定しましたが、地下鉄のない清田区民の不公平感は大きく高まっています。

 学校等も指定しているという話をされましたが、清田区には大きな建物はあまりありません。再度、お考えをお聞かせください。

■秋元市長

 清田区は自動車交通のみで賄っていかざるを得ない状況にあり、交通環境の整備・改善は清田区の大きな課題だと、私は認識しています。

 地下鉄延伸を含めながら、道路の改善、渋滞の解消など、できることからしっかりとやっていくことをお約束させていいただきたい。時間がかかることもありますが、できるところから進めていきます。

 外国からの攻撃の一時避難所については、改めて地域の皆さんと協議をさせていただいて、清田区民の皆さんの安心安全をしっかりと守っていきたいと考えています。

■有田京史副会長(東月寒地区町内会連合会会長)

 今年、私たち期成会に新たに「つしま医療福祉グループ」と「札幌清田ロータリークラブ」の2団体が構成団体に加わるなど活動の輪は広がっています。

 私は、札幌市のまちづくりを札幌市内だけで考えるのではなく、もっと大きな視点で考えるべきと思います。実際、清田方面では北広島市へ向かっての連携軸が出来つつあります。

 地下鉄の清田延伸は、その連携を強めます。今や札幌圏という大きな視点で交通アクセスの整備を考える時代になっていると思います。

 単に採算性だけで判断するのではなく、総合的な観点に立って、次の世代に夢のあるまちを引き継いでいくためにも、地下鉄を清田まで延伸してほしいと思います。

■秋元市長

 皆さんと私の思いは一緒です。問題はそれをどう実現していくのか、です。

 今の国の制度、仕組みでは「料金収入で採算性をとる」というのが大前提になっています。これが大前提なら、何も実現していかないという状況にあります。

 そういうことから、国や道とも話をしていかなければならないことですけども、そういう「料金収入で採算性をとる」という仕組み・制度を変えていただくということも含めて、しっかりとやっていかねばと思っています。

■牧野会長

 最後に、私から一言申し上げます。地下鉄に関して、市の計画では、福住から清田までの区間だけが残っています。長年、行政および市政を担当してきた秋元市長さんですので、ぜひ私たちの希望をなんとか叶えていただけるものと大変期待しております。よろしくお願いします。

※秋元市長への要望書はこちらをクリックすると、ご覧になれます。