札幌市は現在、札幌市の交通体系の指針となる「札幌市総合交通計画」(2011年~2030年)の中間改定作業を進めており、年明けの2020年2月ごろに策定する予定です。
札幌市総合交通計画に地下鉄清田延伸がどのように記載されるのか、清田区民にとっては大きな関心事です。その改定案についての審議が12月12日(木)、札幌市議会総合交通政策調査特別委員会で行われました。
清田区選出の恩村健太郎議員(民主市民連合)が、同計画に地下鉄清田延伸がどう位置付けられているのかを取り上げ、清田延伸を強く市当局に要望しました。
現行の札幌市総合交通計画は、上田前市長が2012年1月に策定しました。地下鉄清田延伸については「地域中心核で一定の需要が見込まれ、地下鉄延伸の可能性がある場合においても、利用者予測に基づく事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要」と記載していました。
それが今回まとめる改定計画では「清田方面の地下鉄延伸については、近年清田区において人口が減少しており、事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要」という記載になるとのことです。
「事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要」という記述はまったく変わりません。
ただし、改定計画では「清田方面公共交通機能向上の検討」を初めて織り込みました。地下鉄福住―清田間の地下鉄延伸を市が検討するというのです。これが、現計画と改定計画の大きな違いです。
さて、12月12日の市議会総合交通政策調査特別委員会で、恩村議員と市側のやりとりはどのようなものだったのでしょうか、傍聴してきましたので以下に記します。
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■恩村健太郎議員
清田方面公共交通機能向上について質問します。
高齢化社会のさらなる進行を見据えると、自家用車を持たない高齢者の方々には、買い物など様々な目的で都心部など居住地域以外の場所にも外出していく環境を整えることが肝要であると思います。
そのためには、公共交通機関が重要な役割を担うことになりますが、清田は地域交流拠点として位置づけられているのにも関わらず、札幌市内全10区の中で唯一、地下鉄やJRなど軌道系交通機関がなく、公共交通手段はバスに頼らざるを得ない状況となっております。
その公共交通機関のバスも、冬季間や札幌ドームでイベントがあるときなどは、大変な交通渋滞により大幅に遅れるなど公共交通の機能が劣っていることは明らかです。
今回の改定案の中では、公共交通ネットワークにおいて福住から清田までの間は「公共交通機能向上方面」と位置付けられているところです。
一方、清田方面への地下鉄延伸については「近年清田区において人口が減少しており、事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要」とあり、現計画と同様の表現になっております。
そこで質問です。清田方面への地下鉄延伸について、今回の改定に当たり、計画検討委員会の中で、どのような議論が行われ、どのような位置づけとなったのか、うかがいます。
■坪田靖・札幌市総合交通計画部長
昨年(2018年)7月の第1回検討委員会を皮切りに、計画改定に向け、これまでに6回の検討討委員会を開催し、議論を進めてきたところです。この議論の中で今後、人口減少局面を迎え、輸送力を拡充するほどの需要が発生しないことが予想され、交通需要の面からは全市的に地下鉄などの大量輸送機関の新たな整備の必要性はないことを確認しました。
一方で、多くの地域交流拠点では、地下鉄、JR駅を中心に高い利便性が確保されているのに対し、清田は他の拠点に比べて都心部へのアクセス性に課題があり、都心部へのアクセス性の向上や公共交通の定時性の確保が重要であることも確認しました。
これらの議論を踏まえ、清田方面については「公共交通機能向上方面」としたものであります。
また地下鉄の事業採算性については、現計画の策定時に福住から清田までの地下鉄を延伸した場合の開業後30年間の収支を計算しており、収支不足になる結果が出ているところであります。
その後の状況変化として、清田区の人口推計が現計画の策定時より減少傾向にあることや建設費の上昇傾向にあることを踏まえ、現計画と同様に「慎重な検討が必要」としたものであります。
■恩村議員
事業採算性が無視できない大事な要素であることは理解します。しかしながら、清田には大きな交通課題があります。これは誰もが認識しているところであり、現在のまま放置していることがいいこととは思えません。
現在、社会問題になっている高齢者ドライバーの運転免許証返納などが本格化していくと、公共交通事情が劣っている清田区にお住いの高齢者は、地域で豊かな暮らしを享受できなくなるのではないでしょうか。
また地域では、子育て世代の方々からも清田区への地下鉄延伸を求める声を、私も多く聞いているところであります。
今回の改定案では、今後10年間の施策の中で「清田方面公共交通機能向上の検討」が新たに位置づけられています。
そこで質問です。この「清田方面公共交通機能向上の検討」とは、どのような検討を行うものなのか、考えをお聞かせ願います。
■坪田総合交通計画部長
「清田方面公共交通機能向上の検討」とは、現状の課題を踏まえ、都心へのアクセス性の向上や定時性のアップなど公共交通としての機能を向上させるために行う検討です。この中では、地下鉄の延伸の可能性を含めて検討することになります。
地下鉄については、札幌市が招致を目指している冬季オリンピック・パラリンピックに合わせて札幌ドーム周辺の土地利用のあり方を検討しており、その方向性を見極めたうえで検討していくことになります。
このほかバスなど既存の公共交通の定時性を向上させる検討などを引き続き取り組む考えです。
■恩村議員
バスの定時性向上・確保に向けた取り組みは非常に重要であり、引き続き取り組んでいただきたいと思います。
しかしながら、清田区は市内唯一、軌道系交通機関がない区です。今後、公共交通を主に交通ネットワークを追求していくためには、区民の悲願でもある清田方面への地下鉄延伸がぜひとも必要であると私は思います。
清田方面への地下鉄延伸について今後も前向きに検討を進めていただきたい。このことを清田区民の一人として強く要望します。
(一部聞き取れないところがありました)
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この日の札幌市議会総合交通政策調査特別委員会には、私たち地下鉄東豊線建設促進期成会連合会の牧野晃会長はじめ清田区、豊平区の町連会長らが傍聴し、恩村議員と市側とのやり取りに耳を傾けました。恩村議員は地域住民の声をよく代弁してくれた」と思います。清田区民の悲願の実現に向けて頑張ろうと改めて決意しました。