現在、改定作業中の札幌市総合交通計画に、地下鉄清田延伸がどのように位置づけられるのかについて、札幌市は10月16日(水)、清田まちづくりセンターで地下鉄東豊線建設促進期成会連合会に説明しました。

 これは期成会側からの要請に、札幌市側が応じて行ったものです。

札幌市が地下鉄建設促進期成会に札幌市総合交通計画の見直しを説明=2019年10月16日、清田まちづくりセンター

 札幌市側の出席者は、札幌市まちづくり政策局総合交通計画部交通計画課の浜岸俊也課長、吉舗大係長、中田隼之係員の3名。期成会側は期成会役員の清田区・豊平区の各町連会長らと事務局員です。

 説明はもっぱら浜岸課長が行いました。

地下鉄清田延伸のルートと想定される駅

 現行の札幌市総合交通計画は、上田文雄市長(当時)の時代の2012年(平成24年)1月に策定しました。2011年から2030年までの20年計画で、その中間改定作業を2018年から市と学識経験者の検討委員会が行っています。2020年2月~3月ごろにまとめる予定だそうです。

 地下鉄期成会は、この改訂版の札幌市総合交通計画に清田地下鉄延伸がどのように位置づけられるのか注目してきました。

 2012年1月策定の現行計画では、地下鉄延伸については「地域中心核で一定の需要が見込まれ、地下鉄延伸の可能性がある場合においても、利用者予測に基づく事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要です」と記していました。

 これが改訂版の交通計画では「清田方面の地下鉄延伸については近年、清田区において人口が減少していることや、建設事業費が上昇していることから事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要」という記述になるとのことです。

 人口減や建設費の上昇などの点を挙げつつも、結論は「事業採算性などを勘案した慎重な検討が必要」と全く同じ記述であり、基本的には現行計画と同じような考え方を示しています。

 この点について、浜岸課長は2019年9月26日の北海道新聞記事「地下鉄清田延伸に慎重/市交通計画骨子」という記事について言及。「慎重というスタンスは変わっていない。『延伸に慎重な姿勢に傾いた』という新聞の記述は間違い」と明言しました。

 札幌市総合交通計画は、第1編「基本的な考え方」と第2編「交通戦略」の2部構成になっています。第2編「交通戦略」は、いわば交通施策の具体的なアクションプランのような位置づけで、2011年から2030年までを前半の10年間、後半の10年間に分けて計画を立てるようになっています。

 今回の改定作業では、今後10年間の後半の「交通戦略」を載せることになっています。現行の計画交通では、地下鉄清田延伸は全く何も記載がありませんでした。

 改訂版では、今後10年間の「交通戦略」として「清田方面公共交通機能向上の検討」という記述が、初めて札幌市総合交通計画に掲載されます。

改定後の計画では、福住―清田間は「公共交通機能向上方面」(緑色の四角の点線)として検討することを明記

 「清田方面公共交通機能向上」とは、いかにも役人言葉ですが、地下鉄のこととしか考えられません。バスはもうあるわけですから。バスは補完交通機関でしょう。

 さらに市は「清田方面公共交通機能向上」の検討時期を早めにやるようです。検討中の計画では、今後10年間の「交通戦略」の実施時期を前期、中期、後期の3つに分けて記述する予定ですが、「清田方面公共交通機能向上の検討」は前期と位置付けています。

 これについて、浜岸課長は「やはり事業採算性は大きなハードルです。札幌冬季オリンピック・パラリンピックの招致に合わせて、札幌ドームから農業試験場方面の土地利用やまちづくりが大きく変わる可能性があり、その動向を見たうえで検討、判断すべきと考えます。オリパラの動きは今後2年間くらいで明らかになっていく。それに合わせて将来需要や事業採算性を再検討していきます」と述べました。

 上田前市長がつくった現在の札幌市総合交通計画は、地下鉄清田延伸をほとんど無視した形でした。こんな記述さえありました。

 「交通基盤の骨格構造は、これからの都市活動を支えるうえで、大幅な拡充は要しない水準に達しています」(概要版)

 「交通基盤の骨格構造」というのは地下鉄網のことです。それを「大幅な拡充は要しない水準に達している」というのですから、これは「もう地下鉄延伸はやらない。あとはバス等でなんとかやってくれ」と言わんばかりの乱暴な宣言です。清田区民の生活権、交通権を無視したものです。

 それに比べたら、秋元克広市長になって現在取り組んでいる改定作業は、少なくとも「清田延伸」に言及し、「その検討をきちんと行っていく」(浜岸課長)姿勢が感じられます。

 しかし、市の「慎重」姿勢は変わらず、清田延伸の見通しは立っていません。10月16日の説明会では、期成会役員の各町連会長らから切実な訴えが相次ぎました。

 「地下鉄延伸は地域住民の悲願です。札幌10区の中で清田区1区だけ非常な不便を囲っている。同じ市税を払っているのに不公平だと、みんな怒っています。他の9区と同じような交通利便性を清田区にもください」(伊藤昭夫北野町連会長)

 「清田区は人口減少しているから延伸は難しいというのは、おかしい。地下鉄が来ていれば、清田区にも高層マンションの計画があったのだから、人口は増えたはずだし、実際、地下鉄が来れば人口も増えると思う」(鎌倉功平岡町連会長)」

 「私は15年くらい期成会に関わっているが、市はいつも『検討』ばかり。検討している間に人口が減りだし、建設費が上がっている。早く延伸の決断をしていただきたい。それから市は清田地区を地域交流拠点に位置付けているが、地下鉄駅がないために一向に地域交流拠点が形成できない。私たちは地下鉄駅が清田の地域交流拠点・まちづくりの要だと思うが、市は一向に清田区のまちづくりの青写真、プランを示さない。地域交流拠点、清田区のまちをどうつくるのか、プランを示してほしい」(牧野晃清田町連会長)

 「事業採算性も重要だが、まちづくりの観点も重要。ぜひ、交通計画の改定検討委員会に本日、各町連会長らから出た声を伝えて反映してほしい」(有田京史東月寒町連会長)

 ほかにも様々な熱い訴えがありました。

 地下鉄の清田方面の建設は、もともと札幌市が建設計画を立てたものでした。市の長期計画に正式に載せ、市議会でも市理事者が清田方面延伸を公言し約束していました。

 そうした動きを見て、清田区に家を建て移り住んだ住民は大勢います。

 地域住民が勝手に延伸を訴えているのではないのです。市自身が延伸計画を作り、清田区方面への住宅街形成を促していたのです。住宅街の形成はほぼ終わりましたが、約束の地下鉄(交通インフラ)は今日まで建設されず、はしごを外されたような感じです。

 秋元市長や市の交通計画担当者と接していて、「なんとか清田延伸をできないか」という思いは伝わってきます。事業採算性という壁が大きく、苦労されているのもわかります。ご苦労は多いかと思いますが、ぜひ今後も頑張っていただきたいと切に願います。