地下鉄東豊線の清田区への延伸について、荒井優衆院議員(立憲民主党、比例北海道ブロック・北海道3区=白石区、豊平区、清田区)が2022年2月16日(水)、衆議院予算委員会第八分科会で国土交通省に見解をただしました。

質問する荒井優議員=2022年1月16日、衆院予算委員会第八分科会

 札幌市は、市が自ら計画していた清田区への地下鉄延伸を凍結している理由として、「開業後30年間で総収入が総経費を上回らなければならないという『国の基準』がある。清田延伸はその国の基準をクリアできないから」と、説明していました。

「公営交通の認可は柔軟に対応」と上原敦国土交通省鉄道局長

 ところが、国土交通省の上原敦鉄道局長は2月16日の衆院予算委員会で「30年という一応の目安はあるが、地方の公営交通の場合は、事業主体がしっかりとしていることから、より柔軟に対応している」と、「30年基準」に必ずしもこだわらない見解を示しました。

 札幌市は上田前市長以来、この「国の30年基準」なるものを唯一絶対的な基準のような言い方で、清田区民や、私たち地下鉄東豊線建設促進期成会連合会に説明してきました。

 例えば、2013年10月、イオン平岡で開催した市長と区民の対話集会「ふらっとホーム2013in清田区」で、上田文雄市長(当時)は「地下鉄建設は国の認可事業です。国は採算性が見込めないものは認可しません。国土交通省の取り決めです。地下鉄の清田延伸は、30年間で累積黒字化しなければならない。これは全国どこも同じルールです。清田延伸は30年間で黒字化できないのです」と述べていました。

 ちなみに上田前市長は、それまでの板垣市長や桂市長時代の地下鉄清田延伸の方針を一転、凍結させた市長です。

 上田前市長は翌年の2014年9月20日、イオン平岡で開催した「ふらっとホーム2014in清田区」でも「採算に乗らない。申請しても国が認めない」「今の制度では建設資金を30年で回収しなければならない。そこに無理がある」と述べました。

 「札幌市が延伸しようにも、国が『30年ルール』で延伸を認めないのだ」。わかりやすく言えば、これが上田市長以来の札幌市の説明です。

衆院予算委員会第八分科会=2022年2月16日

 しかし、そんな絶対的な「国の基準」などないことが、2月16日の国会審議で明らかになったのです。

 地下鉄延伸の許認可権を持つ国道交通省が「より柔軟に対応する」というのですから、あとは公営地下鉄を経営する秋元市長の政治判断で延伸は決まると言えます。採算性だけでなく、地域住民の足を確保するという行政の責任で地下鉄の清田区への延伸をぜひ実現してほしいものです。

 札幌市営地下鉄の東西線と東豊線は30年で累積黒字にはなりません。道外の政令市の公営地下鉄も多額の累積赤字を抱えながらも「行政として住民の足を確保する」として運営されています。福住―清田間だけ「30年基準」を持ち出し切り捨てるのはあまりに理不尽です。

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 2月16日の衆院予算委員会第八分科会での荒井優議員と国土交通省のやり取りは次の通りです。

■荒井優議員
 地下鉄についてお伺いします。札幌市営地下鉄の延伸という話が地域では、ずうっとあります。雪国においては、やはり地下鉄の方が利便性が高い。特に、今回の大雪の時でも、スムーズに運営しているのは地下鉄だけです。今回の札幌の雪害では、バスも止めざるを得ないほど雪が降ったわけですが、地下鉄は普通に運行していました。

 今回、お手元に資料をお配りしました。これは、地下鉄延伸を希望する地域の皆さんが札幌市長に出された要望書です。

 この要望書の中にも記載がありますが、「地下鉄の延伸について札幌市は、30年で累積赤字解消が地下鉄認可の国の基準だと言っている」と書かれています。こういう基準で国は地下鉄延伸というものを認可しているのか、教えてください。

■上原敦・国土交通省鉄道局長
 地下鉄延伸などの鉄道プロジェクトの推進に当たっては、自治体や事業者をはじめとする関係者が連携して、需要の見通し、収支採算性、費用対効果など具体的な事業計画の検討を行うことが必要になっております。

 国土交通省としては、こうした事業計画を踏まえて地下鉄整備に際しましては、地下高速鉄道整備事業補助により、整備費用の最大25.7%を国費で負担し、公営事業者等の支援を行っております。

 さらに、地方からも28.6%の補助があり、合わせて補助金として整備費用の54.3%という公費が入ります。また、地方の出資金もございますので、最終的な借入金は事業費の4分の1くらいになります。

 その場合、収支採算性については、30年を一応の目安という形にしておりますが、地方の公営の場合は、公営の事業主体がしっかりしているということもあるので、その点については、より柔軟に対応させていただいておるところであります。

■荒井優議員
 ありがとうございました。引き続き、地下鉄の延伸についてもしっかりと取り組んでいきたいと思いますので、また、いろいろと教えてください。どうもありがとうございます。

 荒井議員は「清田区への延伸」という表現は使っていませんが、ここで論議しているのは、まぎれもなく地下鉄清田延伸の話です。