清田区選出の山田洋聡市議(自民党)が、9月28日(木)に開かれた札幌市議会第3回定例会で、自民党の代表質問に立ち、「地下鉄東豊線の清田区延伸」について質問しました。
山田議員は、札幌市政の諸課題全般について質問したのですが、ここでは「地下鉄東豊線の清田区延伸」についてのみ、質疑応答の全文を紹介します。
■山田洋聡市議(自民党)
地下鉄東豊線の清田区延伸については、これまでも何度も議論されてきたところです。札幌市のまちづくりの観点から、「札幌市長期総合計画」や「札幌市総合交通計画」が策定され、南北線、東西線、東豊線と地下鉄が整備されてきました。
清田区は平成9年11月に豊平区より分区されましたが、その以前の昭和54年11月、札幌市総合交通対策調査審議会の時に、東豊線については清田区北野地区までの計画となっておりました。当初、緊急整備区画として北東部が位置付けられており、昭和63年12月に栄町駅から豊水すすきの駅まで新設されたところから始まり、今に至っております。
最新の状況としては、平成23年に「清田地区における公共交通の機能向上に関する検討」があり、事業の採算性などを含め説明があったところです。
さて、これまで地下鉄延伸の歴史は、昭和53年3月に南北線北24条駅から麻生駅、昭和57年3月に東西線白石駅から新さっぽろ駅、平成6年10月に東豊線豊水すすきの駅から福住駅、そして平成11年2月に東西線琴似駅から宮の沢駅と4回あります。
例えば、宮の沢駅の延伸後を分析してみますと、様々な要因が考えられる中であることは前提としても、地下鉄の計画のみならず、平成6年3月の「バスターミナルの建設及び周辺地区の開発計画」の策定があり、宮の沢駅周辺の開発が進むという明確な指針が示された中で、人口は増加し、リーマンショックの時には数年の影響は受けたものの、地価の上昇は今もなお続いていることが確認できます。
この時も本市と民間事業者との間で開発計画を策定しており、民間との協力もあり本市のまちづくりは確実に進みました。地下鉄延伸により、交通インフラ整備が進み、民間の様々な施設が建設され、近隣には人の数も人の流れも増え、経済は活性化され、地価の上昇により税収が上がればさらに他の地域のまちづくりにも拡げることもできます。行政主導で民間活力を向上させることは可能です。
そして、これからの本市のまちづくりを考える際、ラピダス新工場誘致に伴い札幌での企業誘致なども検討されている中、道路交通を考えると、人の移動や物流などの観点からも国道36号の利用が増えることは間違いありません。現状、冬の実態としても交通渋滞が頻発している状況であり、市民生活は更なる不便を被ることになります。
さらに、清田地区は地域交流拠点として位置づけられていますが、札幌市内の各地域交流拠点においてJRも地下鉄もないのは清田だけであります。札幌ドーム周辺は高次機能交流拠点、スポーツ交流拠点となっており、人の流れが増えたりすることが予想され、既に「混雑度1.27」、これは「ピーク時間帯はもとより、ピーク時間時間を中心として混雑する時間帯が加速度的に増加する可能性が高い状態」と分析されているのです。これでは清田方面から都心へのアクセスは不便になるばかりです。
同じ札幌市に暮らしているのに、清田区だけがJRや地下鉄の選択肢がないのは、先に述べた状況を鑑みても、さすがに不自然と言わざるを得ません。
そこで質問ですが、地下鉄東豊線清田区への延伸と「まちづくり」について、現状認識と今後の対応について伺います。
■天野周治副市長
地下鉄の延伸につきましては、将来需要が重要であることから、今後の人口の推移や人の動き、土地利用の状況などを十分に見極めたうえで対応していかなければならないと認識しております。
一方、令和4年1月に札幌ドーム周辺地域におけるスポーツ交流拠点基本構想を取りまとめ、現在、具体的な計画を検討しているところでございます。
地域交流拠点清田の将来のまちづくりを見据えた地下鉄東豊線の延伸の可能性については、今後の札幌ドーム周辺における土地利用の状況や将来的な需要の推計等を踏まえて、総合的な検証を行ってまいります。
■解説
山田議員の質問は、清田区民の声をよく代弁した質問でした。熱い思いがありました。市側の答弁はいつもそっけないのですが、そうした中にあっても今回の天野副市長の答弁の中で、注目されるくだりがありました。
それは、天野副市長が「地域交流拠点清田の将来のまちづくりを見据えた地下鉄東豊線の延伸の可能性」と述べた部分です。従来は、その後に続く「今後の札幌ドーム周辺における土地利用の状況や将来的な需要の推計等を踏まえて」というだけで、これが決まり文句になっていました。
今回は「地域交流拠点清田の将来のまちづくりを見据え」と新たに文言を加えたのです。これは、今後、地元や民間から地域交流拠点清田のまちづくりについて動きがあった場合に、それを受ける準備があるという市の意向の表れとも見えます。
ましてや、千歳にラピダス社が進出、国家プロジェクトともいえる最先端の大規模半導体工場が誕生する動きが急速に進んでいます。その場合、千歳方面への札幌市のゲートウェイである清田区、とりわけ地域交流拠点清田(西友清田店や清田区役所がある付近)のまちづくりと交通インフラをどうするのか、大きな課題になってきます。山田議員も当然、こうした問題意識を持って今回質問しました。清田延伸については、そうした動きを見据えて判断するという市の姿勢がうかがわれます。
そして、天野副市長は、①清田のまちづくり②札幌ドーム周辺の土地利用の状況③将来の需要推計―を踏まえて「総合的な検証を行っていく」と答弁しました。以前、市は「採算性」というモノサシ一本だけの判断で「延伸は難しい」といっていましたが、今回は「総合的に判断する」という答弁になりました。これは延伸を願う清田区民にとっては大きな前進です。
公営交通は、採算性だけで判断するのはおかしいからです。豪雪地帯の大都市、札幌市にとって、地下鉄があることは、1年を通して福祉や教育、地域経済の活性化など市民生活の様々な点で基礎となるインフラです。
もちろん赤字は好ましくありませんが、本州の政令市の公営地下鉄は、札幌市と同じく累積赤字がありながらも運営してきました。それは「市民の足」を守るのは行政の責任という「総合的な判断」があるからだと思います。(地域メディア「ひろまある清田」より)